「違法では?」という不安の根拠

採用担当者がリファレンスチェックを検討する際、最も多い懸念が「違法にならないか?」というものです。この不安には主に以下の2つの背景があります。

これらの不安は正当なものですが、適切な手順を踏めばリファレンスチェックは合法的に実施できます。そもそも欧米では採用プロセスの標準ステップとして定着しており、日本でも普及が進んでいる正当な手法です。

リファレンスチェックが合法となる大原則
候補者本人から事前の書面同意を取得し、業務上必要な範囲内の質問のみを行う。これだけで主要な法的リスクはほぼ回避できます。

個人情報保護法との関係

個人情報保護法は、個人の権利利益を保護するため、個人情報の適切な取り扱いを求める法律です。リファレンスチェックにおいて特に関連するのは以下の原則です。

利用目的の特定・明示(第17・18条)

個人情報を取得する際は、利用目的を「できる限り特定」し、本人に「明示または公表」する必要があります。同意書に「採用選考のためにリファレンスチェックを実施し、業務能力・対人評価を確認する」と明記することが対応策です。

第三者への情報提供(第27条)

個人情報を第三者(推薦者)から取得する場合も、本人の同意が原則として必要です。同意書に「元上司・元同僚から情報を取得する旨」を明記し、候補者の承諾を得ておく必要があります。

不要な個人情報の収集禁止

採用目的に不要な個人情報(健康状態・家族構成など)の収集は控えるべきです。質問票は「業務遂行能力・職場での行動特性」に絞った内容にすることが重要です。

職業安定法との関係

職業安定法第5条の4は、求職者の個人情報に関する規定であり、採用選考において収集できる情報の範囲を定めています。

職業安定法 第5条の4(要旨)
求人者は、業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者の個人情報を収集し、保管・使用しなければならない。

つまり、業務遂行に直接関係しない個人情報の収集は法律上問題があります。リファレンスチェックの質問内容を設計する際には、この「業務上の必要性」という基準を常に意識することが重要です。

聞いてはいけない質問・NGケース

以下の情報は、業務との関連性がなく、収集すること自体が法的・倫理的問題となります。

絶対にNG:収集してはいけない情報

  • 健康状態・傷病歴・障害の有無(合理的配慮の観点は別途検討)
  • 妊娠・出産・育児休業の取得状況や予定
  • 家族構成・配偶者の職業・親の職業
  • 思想・信条・宗教・政治的見解
  • 出身地・本籍地・民族・国籍(業務上必要な場合を除く)
  • 財産・借金状況・ローンの有無
  • 前科・前歴(業務上の合理的理由がない場合)

「グレーゾーン」の質問例と対応

質問例問題点代替案
「残業や深夜対応は可能ですか?」家族構成・生活環境を間接的に詮索するリスク業務内容・勤務形態を明示した上で「対応実績」を確認
「体力的に問題ありましたか?」健康状態の間接収集「長期プロジェクトへの継続的な貢献実績」を聞く
「チームになじめていましたか?」抽象的で評価基準が曖昧「具体的な協働エピソード」を事実ベースで確認

合法的に実施するための4ステップ

1

同意書を作成・取得する

「誰に(元上司・元同僚)・何を(業務実績・行動特性)・何のために(採用判断)確認するか」を明示した書面を作成し、候補者から署名(電子署名可)を取得します。同意書は記録として保管しておきます。

2

推薦者を候補者自身に指定してもらう

「元上司1名・元同僚1名」などの条件を提示し、候補者自身に推薦者を選んでもらいます。これにより候補者の自律的な関与が担保されます。

3

質問票を「業務範囲内」に絞って設計する

業務実績・職場での行動特性・強みと改善点・再雇用意向など、採用判断に直結する項目のみを質問票に含めます。プライバシーに関わる項目は設計段階で除外します。

4

取得情報を採用判断のみに使用する

収集した情報は採用選考の目的以外には使用せず、適切に管理・廃棄します。取得した情報を社内で必要以上に共有しないことも重要です。

候補者に拒否された場合の対応

候補者がリファレンスチェックを拒否することは法的に問題なく、拒否を直接の不採用理由にすることは避けるべきです。ただし、現実的な対応として以下のステップを踏むことが推奨されます。

  1. 拒否の理由を確認する:現職への漏洩懸念・推薦者の都合・プロセスへの不信感など、解消できる理由の場合は代替案を提示します。
  2. 代替手段を提案する:現職への連絡なしで過去の職場の方1名のみという条件に緩和する、または自社の追加面接で補う形にするなどの対応が考えられます。
  3. リスクとして評価に加える:理由の説明なしに拒否が続く場合は、採用リスクの一要素として採用判断に組み込みます。ただし、これを表立って候補者に伝えることは避けます。
注意
「リファレンスチェックへの同意を採用の条件とする」という記載を求人票や採用プロセス案内に明記する企業もあります。この場合、候補者は選考参加の時点で実施を承認していることになりますが、同意の任意性が問われる可能性もあるため、法務確認を推奨します。

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よくある質問

リファレンスチェックは違法ですか?
候補者本人の事前同意があれば違法ではありません。個人情報保護法・職業安定法に従い、同意書で目的・取得範囲・利用方法を明示した上で実施する必要があります。同意なしでの実施は個人情報保護法上問題となる可能性があります。
リファレンスチェックの同意書は必須ですか?
法的義務はありませんが、同意書を取得することが強く推奨されます。書面(電子署名可)で「誰に・何を・何のために確認するか」を明示することで、トラブルを防ぎ、GDPR等の国際基準にも対応できます。
リファレンスチェックで聞いてはいけない質問は?
職業安定法・個人情報保護法の観点から、健康・病歴、家族構成・生活環境、思想・宗教・政治的見解、財産・借金状況、前科・前歴(職務と無関係な場合)などは質問してはいけません。業務上必要な範囲に限定することが原則です。
候補者がリファレンスチェックを拒否した場合はどうすればよいですか?
拒否自体を不採用の直接理由にすることは避けるべきです。まず拒否の理由を丁寧に確認し、懸念点を解消できるか検討します。それでも拒否が続く場合は、採用リスクの一要素として判断材料にするという対応が現実的です。
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監修:referencecheck 編集部
採用コンサルタント / リファレンスチェック専門メディア
採用ミスマッチの削減と、リファレンスチェックの適切な実施を支援するため、法務・HR・テクノロジーの視点から情報を発信しています。個人情報保護法・職業安定法に関する記述は公表情報をもとに作成しています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際の運用にあたっては、必要に応じて弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。